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オンコサーミア(腫瘍温熱療法)について

 

温熱によるがん治療の歴史は古く、初期の報告は紀元前の古代ギリシア時代にさかのぼります。


時はたち1980年代の研究で、がん細胞が42.5度付近を境に死滅しやすくなることが分かり、その後も温熱によるがん治療の研究が続けられてきました。

 

そして、近年の加温技術の向上を背景に、温熱療法の有用性が知られるようになり、現在ではがん治療の一つの選択肢として世界各国で行われるようになりました。

 

現在、温熱療法のがん治療における位置付けは、外科手術や薬物療法、放射線治療を組み合わせて行われる標準治療の補助的な治療です。温熱療法の治療効果は他の治療法と同様に、個人差があり、併用する治療法によって異なります。

 

また、一般には知られていない温熱療法の効用として、疼痛緩和や、食欲増進、体力・気力の回復など、治療開始後の「生活の質」の向上が挙げられます。これらは、主観的な要素も大きく、今後科学的な検証が求められる部分ですが、温熱治療の現場では日常的に認められる現象です。

 

副作用の観点では、温熱療法は、一般的ながん治療と比較するとごく軽度であり、ご高齢の方や、体力が落ちてしまっている方でも受けられるやさしい治療法といえます。

 

当院では、温熱療法治療機器のうち、ヨーロッパで発達したオンコサーミア(腫瘍温熱療法)*1の最新機種を導入し診療を行っております。

*1 オンコサーミア治療器は、日本では未承認医療機器のため保険適応外の自由診療となります。

 

なお、当院の関連施設である藤枝平成記念病院(静岡県藤枝市)では、保険適応の温熱療法(ハイパーサーミア)を行っております。ご希望の方は、当院又は藤枝平成記念病院*2へお問い合わせください。

*2 藤枝平成記念病院ホームページ 温熱療法センター 054-643-123(代表)  

 

本ページでは、当院で行っておりますオンコサーミア(腫瘍温熱療法)を受ける前に、知っておいていただきたい内容を説明させていただきます。ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

  1. 要点
  2. 対象となる方
  3. 温熱療法の特徴
  4. オンコサーミア(腫瘍温熱療法)とは
  5. 温熱療法の加温の仕組み
  6. 治療内容とスケジュール
  7. 温熱療法の副作用について
  8. 治療が行えない方

 

要点

◆  がん温熱療法(以下、温熱療法)の抗腫瘍効果は、熱に弱いがん細胞の死滅と、がんを攻撃する免疫機能を活性化することによって発現します

◆  がん治療において温熱療法は、薬物療法(抗がん剤や分子標的治療薬など)や放射線治療、免疫細胞療法、高濃度ビタミン点滴療法との相性が良く、併用することで効果を高めることが可能です

◆  血液がんを除くほとんどすべてのがんが治療対象となります

◆  通常、1コース12回(各40分)の通院治療です

◆  重篤な副作用がほとんど無いため、どなたでも安全に、安心して受けられる治療法です

 

対象となる方

がん治療における温熱療法は、三大治療(手術、薬物療法(抗がん剤や分子標的治療薬など)、放射線療法)との併用による有効性が多くの臨床試験によって示されており、それ自体に副作用がほとんどないことから、どなたでも安全に、安心して受けられる治療法です。

 

当院では以下の①~⑤に該当する方を対象に治療を提供しております。

 

① 標準治療が行えなかった方

② 薬物療法(抗がん剤や分子標的治療薬など)、免疫細胞療法で治療中の方、又は、これから薬物療法、免疫細胞療法、放射線治療、高濃度ビタミン点滴療法を受ける予定の方

③ 標準治療のあと、現在無治療経過観察中だが、検査画像(CT、レントゲン、PET、MRI等の画像)で見えるがんがあり、がんの進行が心配な方

④ 検査画像で見えるがんはなく、現在無治療経過観察中だが、再発が心配な方

⑤ 症状があっても軽度で、日常生活に支障はないが、担当医師から緩和医療をすすめられた方

 

温熱療法の特徴

① 温度による抗腫瘍効果

がん細胞は熱に弱く、約42.5度を境に死にやすくなることが知られています。また、がん組織は正常組織に比べ温められやすい性質があります。これらの性質に基づいて熱でがん細胞を殺傷することが温熱療法の特徴の一つです。

 

② 全身のがんを攻撃する免疫系の著明な活性化

腫瘍組織が39~41℃になると、がん細胞への攻撃に関わる免疫細胞(NK細胞、樹状細胞、マクロファージ等)が著明に活性化し、また、がん細胞内では、HSP(熱ショックタンパク質)が増加し、免疫細胞のがん細胞への攻撃を促進します。

 

免疫系は全身を巡っているため、1つのがん組織を温めることによって、それ以外の部位での効果も期待されます。

 

③ 他の治療法への相加・相乗効果

温熱療法は、薬物療法、放射線治療、免疫細胞療法、高濃度ビタミン点滴療法との相性がよく、併用することで効果を高める作用があります。

 

④ 血液がんを除くほとんどすべてのがんに対して適応可能

がんの種類による制約はほとんどありません。

 

⑤ 少ない副作用

がんの三大治療でイメージされる重篤な副作用はなく、また、三大治療との併用によって副作用を強めることはほとんどありません。

 

オンコサーミア(腫瘍温熱療法)とは

がんに対する温熱療法は、加温部位や方法の違いにより複数の方法がありますが、当院ではオンコサーミア(腫瘍温熱療法)による温熱療法を行っています。治療効果は、対象のがんのタイプや病状、併用する治療によって異なります。 

 

現在、日本において最も普及している温熱療法は、ハイパーサーミアと呼ばれる治療法です。ハイパーサーミアは、1500ワットの高出力で8メガヘルツ(8,000,000ヘルツ)の電磁波を発生させ、腫瘍の温度を42℃以上に高めることを目標に治療が行われています。国内を中心に約100台稼働している保険適応の治療です。
 

それに対して、オンコサーミアは、ドイツを中心に臨床応用され、特殊技術(インピーダンスマッチング)によりハイパーサーミアの10分の1の出力である150ワットで13.56メガヘルツ(13,560,000ヘルツ)の電磁波を発生させ、効率的な加温を可能にした治療器による温熱療法です。

 

高い加温効率により、治療による皮膚の副作用が出にくいだけでなく、眼球を除いた頭部への加温の安全性が臨床試験によって示されている点が、ハイパーサーミアとの大きな相違点と言えます(※)。

 

また、当院で導入している日本初となる最新機種では、従来のオンコサーミア治療器の加熱効率がさらに向上し、温度の立ち上がりの速さを実感することができます。

 

オンコサーミアの温熱治療器は、世界で約400台稼働していますが、国内では台数が限られ、保険適応外の治療になります。

(※)ハイパーサーミアでは頭部への加温はできません。

 

 

温熱療法の加温の仕組み

①水分子を利用した加温の仕組み

成人の体重の60%は水分であり、担がん者の腫瘍やその周囲にも多くの水分子が存在します。

 

水分子には電気的な偏りがあるため、身体に周期的にプラスとマイナス(電流が流れる向き)が入れ替わる交流電流を流すと体内の水分子はそれに合わせて強制的に動かされ振動をはじめます。

 

ある周波数を超えてくると水分子は電流の入れ替わりについていけず、電気エネルギーが熱エネルギーに変換されやすくなり、「水分子を介した発熱」が起こるようになります。

 

交流電流では、プラスとマイナスが1秒間に入れ替わる回数を周波数といい「Hz(ヘルツ)」という単位で表します。オンコサーミアは13.56MHz(1356万Hz)という高い周波数の交流電流を用いることで効率的な加温を可能にしています。

 

conductive heating 01

 

がんが選択的に温められる仕組み

▶ 温度を下げられないがん組織

正常組織では、栄養や酸素などの必要な物質の輸送路である血管網が整然と張り巡らされており、血液がとどこおりなく流れるようになっています。

 

傷などで組織に修復が必要な時には、傷周囲の細胞や組織がやりとりをしながら必要に応じて増え、必要が無くなれば増えなくなるようにコントロールされています。

 

このような組織修復の際にも、通常、組織内には整然とした血管網が構築されていきます。

 

これに対して、がん組織は周囲のことなど気にもとめず「やたらめったら」突貫工事で増築(増殖)していきます。輸送路である血管も突貫工事のため、結果的に入口と出口が分からない迷路のような「血のめぐりのわるい」血管網がつくられます。

 

また正常組織では、温度が上がると血管が膨張し、外からの血流が増えることで組織を冷却する機能が備わっていますが、がん組織ではこの機能がうまく働きません。

 

この状態で、がん組織とその周辺の正常組織を同時に温めると、正常組織では次々に流れてくる血液によって冷却され温度が上がりにくいのに対して、がん組織では血液の出入りが少ないためにうまく冷却されず加温されていきます。

 

このような仕組みによって、がん組織だけが選択的に加温されます。

 

▶電流が流れやすいがん組織

水に食塩を溶かすと水中でイオン(ナトリウムイオンと塩化物イオン)となります。イオンはプラスやマイナスの電荷をもち電気を運ぶことができます。そのためイオンをより多く含んだ食塩水は、ただの水よりも電気が流れやすくなります。

 

正常細胞と比較して、がん組織は多くのイオンで囲まれています。これは、がん細胞が増殖するために、栄養などの物質の細胞内への取込みと不要な物質の細胞外への排出を頻繁に行っており、これらの物質に多くのイオンを含むためです。

 

上述の食塩水の例と同じように、ここでがん組織とその周囲の正常組織に高周波の交流電流を流すと、電流はイオンの多いがん組織を好んで流れ、優先的に加温されます。

 

オンコサーミアのがん選択的加温には、このようなメカニズムも働いています。

 

conductive heating 02

 

治療内容とスケジュール

● オンコサーミアでの加温は、治療器のベッドに寝ていただき(通常仰向け)、加温部位を上下の電極で挟んだ状態で行います。

 

● 通常、1コース12回(各40分)の治療を、週1~3回のペースで、1~3か月かけて行います。

 

● 1コースの治療期間は、治療ペースによりますが2~3カ月間です

※ 1回あたりの治療時間や治療間隔、加温エネルギーは、治療する部位や併用する治療法、ご本人の状況に応じて調整させていただきます。

 

温熱療法の副作用について

当院の温熱療法は、治療部位の違いにより、1回の治療時間が異なる場合がありますが、通常、1コース12回(各40分)の治療を、1-3か月間かけて通院にて行っております。

 

① 加温中の皮膚表面の「ジリジリ」「ピリピリ」とした感覚や熱感、軽度の痛み、皮膚の軽度発赤

比較的頻度が高いものですが、現場での適切な対応により、苦痛なく治療を継続することが可能です。

 

② 皮下脂肪にしこりができる(ときに、圧痛を伴う)

皮下脂肪の多い方に起こりやすい症状ですが、通常、治療期間中または治療コース終了後に自然に消失します。

 

③ 皮膚の小さな火傷(やけど)や、軽度の痛みを伴う皮下脂肪のしこりの痛みの持続

頻度は少ない症状ですが、通常適切な対応により治癒可能です。

 

④ その他、予期せぬ副作用の出現

温熱療法自体には、大きな副作用はありませんが、他の治療法を併用されている場合など、予期せぬ副作用が出てくる可能性があります。大抵の場合、大きな副作用はでませんが、症状の程度に応じて必要な対応をさせていただきます。

 

治療が行えない方

  • 全身状態の悪い方

 

  • 治療中の皮膚の温度変化の知覚・反応・伝達ができない方(意識レベルの低下等で意思疎通が困難な方、麻痺や麻酔等により治療部の感覚が低下している方)

 

  • 体内にペースメーカーや除細動器、補聴器などの電子機器が入っている方

 

  • 加温エリア内、または、その近くに、金属(金属粉含む)やシリコンなどが入っている方

 

  • (サイズが小さい、又は細いチューブやポート等の体内異物がある方は事前に担当医におしらせください。)

 

  • 出血傾向の方(手術直後で創部がふさがっていない状態の方や月経中の方を含む)

 

  • 妊娠中またはその可能性がある方

 

  • 乳幼児等

 

  • その他、担当医が不適切と認める方

 

当院までのアクセスルート

ルート

電車でお越しの方

  • 東京メトロ日比谷線
  • 築地駅2番出口より徒歩約3分
  • 東京メトロ有楽町線
  • 新富町駅1番出口より徒歩約5分
  • 東京メトロ銀座線
  • 銀座駅A6出口より徒歩約15分
  • 都営浅草線
  • 東銀座駅5番出口またはA7出口より徒歩約7分
  • 都営大江戸線
  • 築地市場駅A1出口より徒歩約7分

車でお越しの方

  • 首都高速都心環状線
  • 銀座出口より約3分
  • 東京駅八重洲中央口より
  • タクシーで約10分
  • 東京駅丸の内中央口より
  • タクシーで約10分

※専用駐車場なし。周辺にコインパーキング複数あり。

住所

104-0045
東京都中央区築地1-9-9 細川築地ビル5F

TEL

03-6226-3698

診療時間

9:00~13:00/14:00~18:00

休診日 月・水・日・祝

お電話でのご予約・お問合せ時間: 9:00〜17:00

 

※金曜日は、特定の処置を行うための再診日です。初診の外来診療は行っておりませんので予めご了承ください。

※ 電話でのお問合せは、休診日とは関係なく、平日及び土曜・日曜・祝日も受付けております。

 

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