1. 要点
2. 各がん治療法の守備範囲：『免疫（がん免疫）はがん治療の重要な土台』

要点

◆ がん免疫療法は、がん３大治療（外科療法、放射線療法、薬物療法）につぐ「第4の治療」と呼ばれています

◆ 1㎝の腫瘍の中には、約1億のがん細胞がおり、医療画像では見えない0.1㎜の腫瘍でも10-100万単位の細胞が存在し、再発の原因となるがん細胞集団が体内に無いことを証明することはできません

◆ がん免疫は、３大治療の守備範囲から逃れたがん細胞後の「残党処理」の役割を担い、「免疫（がん免疫）はがん治療の重要な土台」と考えられています。

 

各がん治療法の守備範囲：『免疫（がん免疫）はがん治療の重要な土台』

ご存知のように、がん治療では主に３大治療（外科療法、放射線療法、薬物療法）が、標準的な治療として行われています。

 

がんに対する免疫（がん免疫）を効率的に増強したり、がん免疫の機能を回復させる技術が進歩し、がん免疫療法は、３大治療に次ぐ「第４の治療」と呼ばれています。

 

そして、近年、３大治療の治療効果にとってがん免疫がとても重要な役割を担っていることが分かってきました。

 

3大治療の内、外科療法、放射線療法は、体の一部（腫瘍がある場所やその周辺）を対象とした治療法です。これを局所療法と言います。

 

これに対して、薬物療法（所謂、抗がん剤治療、化学療法など）は、全身（腫瘍がある場所やその周辺を含んだ全身）を対象とした全身療法です。

 

通常、1㎝の腫瘍の中には、約1億のがん細胞がおり、0.1㎜の腫瘍でも10-100万単位の細胞が存在します。

 

しかし、現在の医療画像検査（MRIやCTなど）で検出できるがんは、最小でも数mmとなります。

 

これがどういうことかと申しますと、医療画像などで確認された腫瘍を対象とした外科療法、放射線療法などの局所療法を行う場合も、全身を対象とした薬物療法を行う場合も、治療前後の体内の1㎜以下の微小ながん細胞集団の場所は特定できないというです。

 

要するに、治療が終わり、腫瘍マーカーが正常化しても「がんが体内から消えたこと」を証明できないということです。これが、がん治療において、医師から「治った」という言葉がなかなか聞けない理由です。

 

そして、局所治療の範囲外にあり治療前から見えていなかった「がん細胞集団」や、薬物療法を逃れて生存した「がん細胞集団」は、治療後も「残党」として残り、再発の原因となります。

 

しかし、現在も、1㎜以下のがん細胞が検出できない医療画像を主な情報としてがん治療が行われています。

 

このような画像検査をもとした治療でも、現在のがん治療では、治ってしまう方々も大勢いますし、再発までの期間が通常よりも長くなる方々も大勢います。

 

近年、がん免疫療法（免疫チェックポイント阻害剤や免疫細胞療法など）の発達により、この「残党処理」に重要な役割はたしているのが「がん免疫」であることがはっきりとしてきました。

 

以前より、「がんの予防に免疫力を高めよう」等のキャッチフレーズが多くみられてきましたが、「がん免疫」は、がんの予防から治療まで、私たちの体に本来備わった重要な仕組みです。

 

とりわけ、がん治療においては、３大治療の守備範囲から逃れたがん細胞後の「残党処理」の役割を担い、「免疫（がん免疫）はがん治療の重要な土台」と言えます。

 

 

※上図の捕捉説明

・各治療法の守備範囲は、治療法が含まれる円の内側を示します。薬物療法は、放射線療法や外科療法の守備範囲を内包し、放射線治療は外科療法の守備範囲を内包します。

・上図内のがん細胞は、４つの治療法のエリアに、ランダムに配置したモノであり、「がん」と診断された時、常に、がん免疫療法や薬物療法、放射線治療のエリアにがん細胞や微小ながん細胞集団、腫瘍があることを示しているわけではありません。

・上図では、がん細胞が同心円のより中心に限局するほど、ステージが進んでいないがんを示しています。外科療法の円の中にのみがん細胞がある場合は、外科療法のみで治ってしまう可能性が高いことを示し、外科療法の外にがん細胞が見られる場合、放射線治療または薬物療法が必要であることを示しています。